ロスジェネ問題が問いかけるものとは

○ロスジェネ問題とは何か―

社会に出た時の景気の悪さが、非正規雇用であり続けるなどその後の人生に影響をし続け、一個人で負うにはあまりにも過大な負担を自己責任の名のもとに負っている状況。資産形成ができず、健康状態も悪く、老後の困窮が予想される。

パラダイムシフトを設立するにあたり、初期メンバーとはロスジェネ問題とは何の問題なのかをよく話しました。つらい「思い」をした、している人がいることは分かる。でも何が「問題」なのかが捉えきれないので、どうしたら解決できるのか私自身あまりよく分かっていませんでした。

そこで私は、社会に出た時の景気にその後の人生が左右されるという点に注目し、日本の新卒一括採用や雇用形態について調べてみることにしました。景気には循環があるので、新卒一括採用を続けていれば今後も第二第三のロスジェネ問題が繰り返し起こる可能性があるのは明らかです。

ロスジェネ問題と向き合うには、「今」苦しんでいる人達への対症療法的な救済と、ロスジェネ問題を繰り返さないための根本的な治療が必要となります。今への対処は与謝野代表をはじめ色々な方が色々な案を出しているので、今回私はロスジェネ問題を繰り返さないために必要なことを整理しておきたいと思います。

○ロスジェネを作りだした構造

・メンバーシップ型雇用、ジョブ型雇用

日本で一般的に就活と呼ばれるものは、学校を卒業して就職をすることですが、なぜ就職できるのかと言ったら、「新卒者だから」の一言に収まります。そして一度就職したらよほどのことがない限り定年までその会社で働き続けることができます。つまり、その会社のメンバーであるということに意味がある「メンバーシップ型雇用」で、その人がどんな仕事ができるかということは採用時にはあまり問われません。転勤もあり残業もありますが、それと引き換えに、メンバーであるという理由で十分な給料、福利厚生が付きます。このメンバーになることに躍起になるのが今の就活です。そして、その椅子が極端に少なく、メンバーになれなかった人が大量に発生したのが氷河期時代、ロスジェネです。

日本ではあまり一般的ではありませんが、「○○という仕事ができる」人をその仕事のために雇うことをジョブ型雇用と言います。一つの会社に拘らなくても、そのジョブを手に、転職してもプロフェッショナルとして生きて行くことが可能です。

・何の能力もない若者が就職できる新卒一括のメンバーシップ雇用

新規採用時に、学校を出たばかりで仕事をする上での能力がなくても、後から企業内教育を施せばよいということは、椅子がある限りにおいて若者の失業者問題は深刻化しません。ですから高度経済成長期、バブル期と椅子がたくさんあった頃の失業者問題とは、高齢者の問題でした。

いわゆる氷河期世代では急激に椅子が少なくなってしまい、その後椅子が増えた頃にはもう第二新卒とも言えない年になっていたロスジェネは、非正規でもそれなりに努力をして、仕事をする上でのスキルをいくらかでも身に付けていたでしょう。ここでジョブ型の仕事でそれなりの処遇を受けられる状況があればまだ救いはありました。

しかしそんな中、景気が回復した頃には、何の仕事上の能力のない若者たちが、「新卒者だから」という理由でメンバーシップ型の採用で席を得ていきました。それを見ていて失望するなという方が無理でしょう。

ここはロスジェネ問題の「精神的な」核とも言える部分です。

○ロスジェネを繰り返さないためのヒント

・多様な就活、多様な雇用形態

新卒一括のメンバーシップ型採用をやめろと言うのではなくて(そうすると何の社会的スキルのない若者の雇用問題が発生してしまう)、メンバーシップ型に偏っている採用の種類を多様化することで、景気に左右される極端な売り手市場、買い手市場のボラティリティを低くする。一世代が丸々ロスト(失われ)することを避けるにはこういった考え方が必要なのではないでしょうか。

そうなると、正社員(メンバー)でなければまともな生活ができない、家族を養えないという問題を解決しなくてはなりません。「私はこの仕事ができます」という人が、新卒でも転職でもジョブ型雇用の職を得られ、仕事に見合った報酬を得られるようにしていくことが必要です。

・景気の波からの自衛策

自分が新卒の時に景気がいいかどうかは、その時になるまで分かりません。メンバーシップ型の雇用に偏っていると、社会人人生のスタートでメンバーになれるかどうか、そしてその後の人生のだいたいの行く末が、景気次第の運不運で決まってしまうことになります。ある程度ジョブ型の仕事が一般的になれば、「これができる」という看板を武器にどこでも働ける人が強いということになります。ということは、景気の波からの防衛策は、教育段階である程度社会人としての素養が身に付き、社会に出て即使えるスキルを手にしておくということになります。しかし現状の教育はそうなっているでしょうか。答は明らかにNoです。

最も早く現実的にできそうなことは、専門学校等の職業教育の位置づけを高めることでしょう。

○現ロスジェネへの対症療法

ここまで、ロスジェネが発生する構造と、ロスジェネを繰り返さないために必要な考え方を見てきました。最後に少しだけ、現ロスジェネへの対症療法についても触れておきたいと思います。

・現ロスジェネの強み

ネガティブなイメージを持たれがちな現ロスジェネですが、実は他の世代より圧倒的に有利なものを持っています。それは、アナログからデジタルへの移行を知っている世代だということです。アナログどっぷりでデジタルについていけない旧世代でもなく、生まれた時からPCスマホがあるデジタルネイティブでもなく、自分の成長と共にデジタル技術が発達し、どんどん世界が変わっていくのを見てきました。「なぜこれが便利なのか」がわかる。それが現ロスジェネです。

・必要とされる場を作る

諦め、失望、絶望を乗り越えられるのは本人だけかもしれませんが、乗り越えるための支援は他人でもできることです。手を差し伸べるというのは、ただお金を上げるとかそういうことではなく、必要とされる場を作り、正当な報酬を与えることです。ロスジェネが社会に出た時に就職難な社会を作ったのはロスジェネではありません。だから彼らだけが失望を背負い続けるというのはアンフェアです。民間で今更雇えないということなら、政治的な救済が必要でしょう。私はロスジェネの強みを活かすならば、サイバーセキュリティ人材の育成に優先的にロスジェネを起用したら良いのではないかと思っています。

○まとめ

世代によって極端に売り手市場買い手市場が変わるという現状を、いつでも世代内で痛み分け(メンバーになれない=痛みと表現するならば)という状況に組み変えて行くことが第二第三のロスジェネを作らない方法です。労働市場のかなり大掛かりな変革とともに、教育段階である程度社会に出て即使えるスキルを手にしておくという教育改革も必要となります。それがこの日本で支持されるかどうかはわかりません。しかしいつの時代でも助けが必要な人はいるし、その人達に手を差し伸べられる人達が必要です。世代内での痛み分けという考え方は、見方を変えれば、手を差し伸べられる人がどの世代にもある程度いる状況を作るということです。

世代間闘争を続けますか?世代内協力体制を作りますか?それが、ロスジェネ問題が投げかける問いの本質なのだと思います。

浅田恵理

プロフィール
慶應義塾大学経済学部卒業後、アパレル勤務を経て香港在住。
2014年衆議院議員選挙自民党比例東海ブロック 候補
2016年自民党参院選オープンエントリーファイナリスト
元自民党衆議院議員秘書
現在は保育士資格を取得し「オーダーメイド子育て支援」に取り組んでいる。

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